今年第44回を迎える「三陸港まつり」のフィナーレを飾る「金津流浦浜獅子躍」「浦浜念仏剣舞」 の芸能の共演の中で、新作能「水の輪」を上演致します。「水の輪」は水の浄化をテーマに環境問題についてこどもたちと一緒に考える新しい能楽です。
越喜来の海をきれいにするため、こどもたちが「気仙ことば」で登場し、美しく掃除をします。やがて越喜来の海から水の神様が現れ、越喜来の海の美しさをたたえ、越喜来の繁栄をことほぎます。
今回は、三陸と大阪を中心とした三陸と全国のこどもたちによる1500枚の老松の葉を使った、三陸の宇海の色に染まった15本の老松の前で、こどもたちと一緒に能を演じます。
新作能「水の輪」
掉さす女・水神: 山本 章弘 龍神 : 山本 麗晃 旅人 : 福王 知登 親鳥 : 野村 太一郎 こどもの鳥たち: 中村 円香 刈谷 雅 中村春亮 不思議な鳥たち: 古水 里 古水 延 石川くらら 石澤 蓮 古澤 蒼太 柏崎 瑛仁 坂本洸太朗 川畑しずな 笛 : 斉藤 敦 小鼓: 古田 知英 大鼓: 守家 由訓 太鼓: 中田 弘美 後見: 梅若 基徳 井戸 良祐 地謡: 杉浦 豊彦 大西 礼久 今村 一夫 武田 崇史 (ハタラキ 前田和子) (ワキハタラキ 喜多雅人)
「水の輪」あらすじ 越喜来の。尽きせぬ水こそめでたけれ。
むかし、むかしのお話です。京の都に住む旅人が、美しい三陸の海を見るために、旅にでました。旅人は、都を出て、富士の山をながめ、会津米沢を通ると、沖の方に金華山が見え、さらにすすむと気仙沼に着きました。ふと見ると、海に女が棹をさす、一隻の船がとまっているので、一緒に乗せてもらうことにしました。旅人が三陸の美しい自然と海の景色の様子を楽しんでいると、船はやがて大船渡に着きました。旅人が船をおりようとすると、急に女の顔色が変わり、汚れてしまった三陸の海の水を嘆き、もとの美しい三陸の海の水を取り戻してほしいと言いながら、海の中へと消えていきました。
旅人は驚きましたが、さっきの船頭の女はきっと三陸の海にいらっしゃると言われている水の神様だということに気がつきました。そして、何とか海の神様に戻ってきて頂こうと考えていると、お父さん鳥と子供の鳥たちがやってきました。親子の鳥たちは力を合わせて掃除をはじめます。すると、越喜来の不思議な鳥たちもやってきて、一緒に掃除をはじめました。みんなが力をあわせて、水が美しく清められると、龍の神様が現れて、水の神様が通る道を作りました。すると、水の中から水の神様が再び現れて、三陸の美しい水をほめたたえ、美しい水によってもたらされる越喜来の繁栄を言祝ぎました。
「気仙ことば」によるアイ狂言のこどもたちのセリフ(作:古水 力 山本 章弘)
(親鳥)
いかにやいかに。水鳥(みずとり)水鳥(みずとり)。龍神様(りゅうじんさま)がお怒(いか)りじゃ。水神(みずがみ)様(さま)がお嘆(なげ)きじゃ。
(こどもたち)
ピィ。なぞな なぞな なぞなんだべ。 なぞな なぞな なぞなんだべ。
(親鳥)
水(みず)が濁(にご)れば龍神様(りゅうじんさま)の。道(みち)がふさがり通(とお)られへん。
(こどもたち)
ピィ。ばばば ばばば てーへんだ。 ばばば ばばば てーへんだ。
(親鳥)
いかにやいかに。水鳥(みずとり)水鳥(みずとり)。龍神様(りゅうじんさま)がお怒(いか)りじゃ。水神(みずがみ)様(さま)がお嘆(なげ)きじゃ。
(こどもたち)
ピィ。なぞな なぞな なぞなんだべ。 なぞな なぞな なぞなんだべ。
(親鳥)
龍神様(りゅうじんさま)が来(こ)なければ。水神様(みずがみさま)も現(あらわ)れぬ。
(こどもたち)
ピィ。ばばば ばばば てーへんだ。 ばばば ばばば てーへんだ。
(親鳥)
いかにやいかに。水鳥(みずとり)水鳥(みずとり)。水神様(みずがみさま)に会(あ)いたくば。力(ちから)を合わせて掃除(そうじ)しよ。
(こどもたち)
ピィ。ほんだら やっぺし やっぺしな。 ほんだら やっぺし やっぺしな。
(親鳥)
いかにやいかに。水鳥(みずとり)水鳥(みずとり)。龍神様(りゅうじんさま)のお通(とお)りじゃ。水神様(みずがみさま)のお参(まい)りじゃ。
(こどもたち)
龍神様(りゅうじんさま)がとうりゃすよ。水神様(みずがみさま)のめいりゃすよ。
ピィーーーーーーー!
Copyright: Yamamoto Noh Theater 2018 写真:佐藤寛志